8.19
衆院選が公示された。障害者や高齢者も、未来を託す一票への思いは変わらない。だが、投票所や候補者の主張を知る機会にバリアーを感じることもある。一票を投じる際のバリアフリー対策はどうなっているのか。
「市内すべての投票所に文鎮を置くことになった。うれしい」
千葉県失語症友の会協議会の横田清会長(68)は、右半身にまひ症状があり、片手で苦労しながら投票用紙に記入してきた。
今春、二度の地方選が行われたこともあり、投票所で改善を直訴。地元の選挙管理委員会は文鎮を用意することにした。同じように投票所で困る事例は全国で少なくない。
「投票記載台は比較的暗く、弱視の方は顔を近づけて書くので余計に暗くなる。照明を置いてほしい」「聴覚障害なのに言葉で指示を受けたり、案内や手順も分かりにくいところに掲示されていたりする場合がある」。聴覚や視覚障害者が指摘するように、投票所の利用のしづらさは残っている。それは高齢者にとっても同様だ。
前出の文鎮については、県選管は以前から市町村向けの投票事務手引に、投票所の物品として文鎮を掲載している。
川崎市では性同一性障害の有権者に配慮し、男女で色が違った投票用紙引換券を同色に統一。投票用紙に点字で記入するための点字器や老眼鏡などを用意。係員の研修で障害者、高齢者への配慮を促している。
こうした取り組みをする自治体がある一方で、投票所のバリアフリー化は、運営する各市区町村の障害への理解度に委ねられている面がまだ大きい。
候補者情報を得る際にもバリアーはある。
「衆院選はようやく比例代表について政見放送で手話通訳が付くようになった。でも、小選挙区の政見放送は候補者が映像を持ち込めるから、手話通訳が付くかは候補者、政党次第」
東京都聴覚障害者連盟の男性会員は、候補者や公約に関する情報提供の不十分さをこう話す。小選挙区が見送られた理由を、総務省選挙部は「手話通訳士の確保が物理的に難しい」と説明する。
候補者経歴などを載せる選挙公報は候補者を選ぶ大切な材料だ。視覚障害者には選挙公報を点字訳、音声化した「選挙のお知らせ版」が製作され、都道府県選管が市区町村選管や障害者団体、点字図書館などを通じ配布する配慮はされている。
だが、日本盲人会連合の鈴木孝幸情報部長は「障害者団体に所属していない人もいて、『お知らせ』が行き渡ってはいない」と指摘。「地元自治体の障害者担当部署に住所などのデータがあるのだから、個人情報の問題について本人に確認して、全員に送るという努力をすべきだ」と注文をつける。
障害や要介護度が重度で投票所へ行くのが困難な人には、郵便を利用する投票制度がある。自筆が困難な場合の家族らによる代理記載による郵便投票も可能になった。
日本ALS(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症)協会の海野幸太郎さんは「会の集まりなどで制度を紹介するが、知らない人もいる。もっと周知してほしい」と話す。その上で「医療や介護の支援が後退しているため、生きる意欲が低下して投票に関心を持てない人もいる」と話す。生きにくい社会状況そのものが選挙のバリアーになっている面もあるようだ。
進んだ?投票のバリアフリー
テーマ : ALS(筋萎縮性側索硬化症) - ジャンル : 福祉・ボランティア
タグ : 日本ALS(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症)